(過去の「雑色雑光」はこちらからどうぞ)

今年もやりました「本山電脳報恩講in三宝寺」


■本山報恩講インターネット中継
 本願寺が1月9日から16日の報恩講をネット配信するようになって、もう何年経ちましたでしょうか。私の2010年の日記に、「見た」と記していますので、もう長く続いています。もちろんそのすべてを見ることはできませんが、毎年時間を見つけては、そのWebサイトを開いてきました。また、恒例の報恩講の他、「宗祖大遠忌法要」や「法統継承式」のような、本山の歴史的な法要が配信されたことは京都から遠い地に住む者にとっては有り難いことです。
 本山報恩講「一・七ヶ日」の法要のクライマックスは15日の大逮夜から16日のご命日御正当でしょう。以前、「成人の日」は15日に固定された休日でありましたので、教職の身にあった私にはこの日程の重なりは有り難いものでした。総会所の「通夜布教」も何度か聴聞させていただいたことでした。ところが、現在は「成人の日」は固定せず、15日が「休日」に当たることが少なくなりました。
 このような時、本山報恩講の諸行事がインターネット中継されることはうれしい。勿体ないことですが、私のような高齢者にとってはストーブにあたり、炬燵に入ったまま本山御影堂にお参り(?)できるのです。ご親教を頂いたり、特別講演や通夜布教も聴聞できるのです。
 現在のネット中継は御影堂の「日中法要」「逮夜法要」「初夜法要」「改悔批判」など大切な行事を網羅してくれます。また、総会所における「特別講演」、「通夜布教」にもカメラが入ってくれます。


■三宝寺「小寄りサロン」で 「電脳報恩講」
 三宝寺の常例 「小寄りサロン」の開催日は15日、思いつきました。「この本山報恩講を本堂で大写しして、みんなで参拝しよう!」と。いつもの参加者(数名ですが)に提案したら大賛成。「オッサンのお話しもマンネリやしね」ということで、昨年から始めました。  1月15日、本堂にノートパソコンを持ち込み、プロジェクターをつなげ、スピーカー代わりのカセットデッキをくっつけ、スクリーンをかけてスイッチオン。ちゃんと「逮夜法要」の開始を待つ本願寺御影堂に直結、拡大していますので映像はちょっとボケ気味ですが視聴には十分です。この日、お参りしてくださったのは常連さん8人、画面の御門主さまにあわせて合掌・礼拝。お勤めは御親修(御門主様が御導師を勤められます)の「廣文類作法」、これはちょっとなじみがありません。私はこの本山報恩講の15日の「逮夜法要」以外では聞いたことがありません。手持ちの「声明集」から経文をコピーして配布しました。「廣文類」とは「御本典・教行信証」のこと、お勤めの最初は「教行信証」の総序を音読します。
 始まりました。しかし、これはイカン、難しい、難しすぎる。お参りの御同行は勿論、情けないことにプロの僧侶である私がまったくついてゆけない。「ひそかにおもんみれば、難思の弘誓は難度海を度する大船、・・・」と読み下し文ではよく親しんでいる内容ですが、漢文のままだと、経文の字を追うことさえ難しく、途中からどこを誦んでいるのかさえ見失う始末。去年も同じ状態、この年齢になると、来年もついてゆけないでしょうね。
 続いては「正信偈」の文類の節でのお勤め、これはイケル。いつもの寺の報恩講でのお勤めだ。住職・坊守を含め三宝寺本堂の10名がご本山御影堂満堂の御同行に加えていただいた感でした。御門徒さんには慣れない節回しではありましたが、念仏、回向も一緒にお唱えして法要は終了。
 その後、「伝灯奉告法要についての消息」の発布式があり、ご門主さまが全宗門構成員に「ここに法統継承を仏祖の御前に奉告いたしますとともに、あわせて本願念仏のご法義の隆盛と宗門の充実発展とを期して、平成28年および29年に、伝灯奉告法要をお勤めすることになりました。 」と述べられました。それを受けての石上智康総長の決意をお聞きしてこの日の「本山参り」は終了。
 この日の「小寄りサロン」は、ネット中継の後、報恩講についてオッサン(住職)が少々補足して、お勤めの部は終わり、後はいつもの坊守が中心の茶話会、お正月に頂いたケーキやお菓子で「電脳報恩講」よりずっと盛り上がっておりました。
 本山のネット中継は「特別講演」の再放送を組んでくれていたり、15日夜から始まる通夜布教のすべて、それに続いて16日のお晨朝まで映し出してくれます。おかげで本山ではこの晨朝だけでお勤めされる「正信偈真譜」も聞かせていただくことができます。


■ネットに頼りすぎは・・・
 報恩講全法要のネット中継は何年か前には東本願寺でも行われていた記憶がありますが、昨年のお東の報恩講では、期間中、高倉会館で行われた「真宗教学学会講演会」(11月24日)と「親鸞聖人讃仰講演会」(11月26・27・28日)だけがネット配信されました。私はこのうち、徳永道雄先生(京都女子大学名誉教授)と 廣瀬 惺先生(同朋大学特任教授)が講演された真宗教学学会講演会をナマで聞かせていただきました。講演会はナマがいいですね。その臨場感はネットを経由しては伝わりません。溢れんばかりの聴衆とともに多くの真宗の碩学が立った高倉会館の演台に集中するとき、聞く姿勢が整います。講演会場では手元にレジメ(資料)がいただけることも大きい。この日の両先生のお話はパソコンの前でフリーに聞いているだけではさっぱり理解できなかったでしょう。丁寧な参考資料があってこその聴講でした。
(東本願寺のHPにこの日の館内を撮った写真があり、偶然私が写っていました。さて、どれでしょう?)


■法座活動を多様に
 宗祖大遠忌が円成し、法統継承もあり、いよいよ宗門の新時代の始まりです。この情報化の時代、お念仏の輪を広げてゆくことは容易いことではありません。今、宗門は、キッズサンガの願いを軸に子どもはもとより若者たちへのご縁づくりを「子ども・若者ご縁づくり」として運動を展開していくことを提唱しています。
 組の活動、各寺院の活動もこれまでの取り組みにさらに工夫を凝らす必要があろうと思います。上記の「電脳報恩講」もその一つです。本山も、教区もそしてこの御坊組もホームページを開いています。みなさま方に大いに訪ねてもらいたいと思います。そして多くのご意見を頂きたいと思います。
 一方、大事に受け継いできた法座活動のスタイルも大切です。丁寧な「おつとめ」と阿弥陀さまのお心を伝える「法話」これを軽んじては浄土真宗ではなくなるでしょう。時代の奔流の中、変えるべきもの、変えてはならぬものを見極め一歩一歩進んでまいりたいものです。
南無阿弥陀仏

御坊組組長
湯川逸紀(三宝寺住職)

▲ページトップに戻る