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「阿尾光徳寺様で住職継職奉告法要厳修さる」

 今年の宗門最大行事は「伝灯奉告法要」、お代がわりの大法要です。一般寺院であれば「住職継職奉告法要」でしょうか。このたび、御坊組内でもこの節目の年に新たな「住職」が誕生しました。若葉薫る4月17日、日高町阿尾 海光山光徳寺において玉置信夫師の住職継職奉告法要がにぎにぎしく執り行われました。
 前住玉置聖定師が往生されて23年、長らく三男の和歌山養専寺住職玉置證師が代務住職を務めてくださっていましたが、このたび長男の信夫師が県職の定年退職を期に、教師検定、習礼をすませ光徳寺第19世の法灯を継承されました。

■正信偈のお勤めで新住職誕生を寿ぐ
 当日は、朝から雨、どうなることかと心配しましたが、次第に天気は快復、正午ごろには向拝に飾った仏旗が春風にはためき、参拝者を迎えました。五色幕は雨が予想されましたので本堂内側に掛けられていましたが、本堂内陣の卓上はすべて五具足、若松を芯とした見事な仏華は前々日、婦人会の方々が丹精を込めた荘厳です。金色の和蝋燭や大きな紅白の鏡餅が慶祝法要を象徴します。
 午後2時、喚鐘が入り法要開始。会係の養専寺様の司会のもと、隣寺の光明寺様、西教寺様、実弟の富山妙宗寺様、御坊組組長が内陣出勤しました。入堂後まず、新住職と組長が外陣に降り、組長が本山から届いた「住職許状」を門徒衆に披露し、新住職に贈呈しました。 次ぎに新住職が登禮盤を行い、三奉請のあと朗々と住職継職の表白を披瀝されました。
 お勤めは「正信念仏偈作法」、広い本堂を埋めた御門徒さま方のお顔には安心と喜びが満ちあふれ、その大音声は阿尾中に響き渡りました。
 お勤めの後、外陣にて、法要にあたっての本山からの祝辞、祝電の紹介の他、組を代表して組長から祝辞を述べさせて頂きました。
 続いて新住職の力強い決意表明と謝辞があり、最後に門徒総代長の上出貞和氏から新住職への期待と門徒方への一層の協力要請がありました。1時間弱ではありましたが、多くの門信徒の温かい眼差しの中、心温まる法要となりました。


■組長「光徳寺住職継職奉告法要 祝辞」
 本日は、御当山第19世住職継職法要の厳修、まことにおめでとうございます。組内寺院を代表して心からお祝い申しあげます。先代18世玉置聖定師が往生されて23年、御門徒さま方には待ちこがれた新住職の誕生でありましょう。
 御当山の歴史は古く、かつては「金蔵寺」と称する真言宗寺院であったと伝えられます。文明年間、時の住職道名らが冷水浦において本願寺蓮如上人の御教化を被り、本願念仏の教えを感得されたことに始まります。道名らによって他力易行の教法こそいかなる凡夫も救われると伝えられると、村人こぞって浄土真宗に転宗して530年、「光徳寺」という寺号こそ後になりますが、紀州きっての真宗古刹であることは間違いありません。また、阿尾は戦国期、石山戦争で信長に追われた本願寺第11世顕如上人の長子教如上人(後の東本願寺宗主)を僧俗が命がけでお守りした地として真宗史に刻まれています。
 本願寺は一昨年6月、第24代即如門主から第25代専如門主に法統が継承されました。そして、今秋からは伝灯奉告法要が10期80日間に渡って厳修されます。いま宗門は時代の大きな節目を迎えています。ちょうどこの期において、光徳寺様に新住職が誕生されますことは大変大きな意味があろうかと思います。
 和歌山教区14組のうちでも御坊組は過疎高齢化が顕著な地域にあります。27ケ寺ほとんどの寺院が門徒戸数の大きな減少に悩んでおりますが、光徳寺さまもその例外ではないと伺っています。今後、旧態依然とした寺院活動では御法義の繁盛どころか寺の護持も立ちゆかなくなることは明白です。この思いからいま教団は「結ぶ絆から、広がるご縁へ」をスローガンとする「御同朋の社会をめざす運動(実践運動)」を提起し、教区、組、寺院あらゆる段階での強力な寺院活性化の取り組みを求めています。その核となるべく「住職」の役割はますます大きなものになっています。
 新住職玉置信夫師は本願寺勧学韜晃和上の孫、本願寺派宗会議員聖定師の長男、寺院子弟としては申し分のない環境に生まれ育ちました。 また有り難いことに阿尾の地はお寺に対しての思いがことのほか篤い土地柄です。御歴代の御教化もありましょうが、報恩講での子どもたちのお話し。多くの隣人が集まっての七日参り奉讃などなかなか他ではみられません。これを「土徳」と言うのでしょう。阿尾はまさにお念仏がしみこんだ土地柄です。新住職にはこの土徳に甘えず、誠実を本とし、今後いっそう教学、声明の研鑽を積み御門徒の期待と信頼に応えられるよう精進していただきたいものです。
 住職は、日常みなさまとの交流、法要、各種研修会にいそしみます。就中、大切なことは宗祖親鸞聖人のご生涯とおさとしのことばの理解、どこに注目するかに要があります。その意味で、住職は「月を指すゆび」であると言っても良いでしょう。御門徒のみなさまに対しての役割と責任は大変重いものがあります。
 新住職は長らくの公務を退き、寺院専従者としてご活躍いただけるとのこと、御坊組としても心強く頼もしく思っています。これからは組や教区の活動にも大きく貢献していただくことを念願しております。
 御門徒のみなさまにおかれましては、どうか今後とも新住職に対し、暖かい励ましとお支えをよろしくお願いいたします。
 終わりになりましたが、前住さまご逝去の後、長らく住職代務のお役目を担って頂いた養専寺御住職玉置證師に深く感謝申しあげます。おかげさまで、組としては当寺の住職不在が支障をきたすことはありませんでした。しかし、今後とも妙宗寺御住職長岡行夫師とともに御兄弟として今まで通りご当山をお支え下さいますようお願い致します。
 以上をもちまして、粗辞ながら御坊組長としてのお祝いの言葉とせていただきます。


 当日は150名近い参拝者で、盛大な法要となりました。住職の決意のほどを示す御挨拶も総代長上出貞和さまの御挨拶も的を得た素晴らしいものでありました。これからの光徳寺様の前途が明るく開けてゆくような法要でした。


御坊組組長
湯川逸紀(三宝寺住職)

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