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手洗い処を守った「沙羅双樹」に花が!




 昨年9月始め近畿地方を襲った台風21号、当地にも甚大な被害をもたらしました。幸い三宝寺の被害は軽微で、山門の装飾瓦が一部損壊した程度で済みました。
 しかし、一本の木の頑張りが無かったら、手洗い処(「漱浄舎」と名付けています)が大被害を受けるところでした。当日は南東からの暴風がすさまじく、境内を取り囲む木々が倒れ、枝が折れ建物を襲いました。最も危うかったのはクロガネモチの巨大な枝、地上20mくらいのところで折れた枝元の直径は70cm、長さ8mくらい。それが折れて落下というより吹き飛んできました。その様子を雨戸の隙間から見ていましたが、「これはアカン、『漱浄舎』がつぶれた!」と覚悟しました。


 しかし、その巨枝が『漱浄舎』の屋根すれすれのところで止まったのです。その巨枝の落下を必死に防いだ木があったのです。それが、樹齢20年くらいの若いハクウンボクでした。
 この木は、今から15年前、本堂が新築された時、天性寺の前住職様から落慶のお祝いとして頂いた記念樹です。その後、場所の環境がこの木にあったのかどんどん生育し、10mくらいになっていました。太さはそれほどではないのですが、枝も四方に伸ばし、風格ある樹形になっていました。これが、巨枝を受け止めてくれたのです。

 ハクウンボクという木は、「仏教三聖木」の一つサラノキの代替樹として知られています。「仏教三聖木」とは釈迦誕生のアソカ(無憂樹)、成道のインドボダイジュ(菩提樹)そして涅槃のサラノキ(沙羅双樹)です。これらはいずれも日本国内(本州)では露地栽培は難しく、古くから寺院ではそれらの代替樹が栽培されてきました。
 サラノキの代替樹はツバキ科のナツツバキやヒメシャラが多いように思いますが、エゴノキ科のハクウンボクの枝からこぼれるよう咲く小さな白い花が本家のサラノキの花に似るとされ、代替樹の一つとなっています。

   

 ちなみに、釈迦涅槃図にある沙羅双樹のサラノキはフタバガキ科の高木で春に開花するるようですが、日本では植物園の大温室によく植栽されていますが、大変開花しにくい植物として有名です。私はその花を何年か前、草津市の「水生植物公園みずの森」の温室で見たことがありますが、当時は「サラノキの開花が毎年見られる国内唯一の植物園」と宣伝されていました。その後、東京の「夢の島熱帯植物館」で開花したとのHP記事を目にしたことがあります。
 拙寺の境内には菩提樹の代替樹、シナボダイジュ(シナノキ科)も植えています。どうぞ見に来て下さい。





       南無阿弥陀仏  南無阿弥陀仏






御坊組組長
湯川逸紀(三宝寺住職)


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