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西川に「渓流の宝石」が



 私は、朝夕30分ほどの散歩をするのが日課です。好んで歩いているのではありません。和歌山市のアパートに住む末娘家族が「育犬放棄」したトイプードル(オス5才)を預からざるを得なくなり、この冬から老夫婦と一緒に暮らしております。室内犬ではありますが、私の部屋の一部を彼に分けてやり、余りに鳴き声がうるさいので長いリードをつけて自由に外にも出れるようにしております。
 毎日の散歩コースは極めて短く、入山に沿って流れる西川の堤防を中橋から戸崎橋をロの字型に回るだけ、1kmもないくらいです。ここを犬とひっぱりあいをしながら30分ほどヨタヨタと歩きます。
 「西川」は名前は単純ですが、日高川水系の主要な河川で原谷や上志賀に源を持ちます。日高川に合流する「金兵衛」は海に近く、中流域にある入山付近も潮の干満の影響を大きく受けます。豪雨による入山地区での氾濫、民家への浸水も何度も経験してきました。現在、県による西川河川改修事業が進められているところです。
  
 先日、戸崎橋を渡っていると、東詰めのヨシの葎からピューと一羽の鳥が飛び出しました。「アツ! カワセミ だ!」鮮やかなコバルト色の背を見せて川面を切り裂いてゆきました。しばらくすると、戻ってきて堤から突き出ている土管に止まりしばし休息。慌てて携帯を取り出し写真をと試みましたが、なにせ私の携帯電話はガラケー、もたもたしてしているうちにどこかへ飛んで行ってしまいました。
 カワセミを漢字で書くと「川蝉」または「翡翠」、宝石の翡翠(ひすい)はこの羽の色からつけられたと聞きます。またカワセミは「渓流の宝石」とも言われます。清流にすむメダカやオイカワ、サワガニなどを食べているイメージがあります。
  
 この西川、「渓流」のイメージからはほど遠く干潮で水の引いた川底には、カンやビン、プラスチックゴミが泥だらけの石に引っかかってるのが見えます。泳いでいるのは巨大なコイの群れと侵略的外来生物のブラックバスそして、ミシシッピアカミミガメがうじゃうじゃ。濁った水が大好きな生き物ばかり。

 近年カワセミが人家近くによく見られるようになったのは川の水環境が改善されてきたことと、カワセミが自分たちの生活や食性を変えてきているとの指摘があります。しかし、それにしても、アカミミガメが甲羅干しをしている上をカワセミが飛び回っているというのはちょっと似合いませんね。これが「新しい生態系」だとしても・・・。
  
 紀州有田奥に生まれ親鸞聖人と同時代を生きた華厳宗中興の祖明恵上人は「阿留辺畿夜宇和(あるべきようは)」という言葉を残しています。西川の生態系の「あるべきようは」こんなものではないでしょうね。

    /川せみの ねらい誤る 濁(にごり)かな 正岡子規/




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                            入山三宝寺住職 湯川逸紀












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